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忘れる



幼児期や児童期の記憶って、たくさんあるとは思いますが、


断片的な風景であったり、抱いた感情、感覚、知覚など。。。


思い出す、という作業をしないと記憶ってなかなか辿る事ができなかったりします。



強烈な体験や感情には、人間の生存本能が作用して覚えていたりしますが、


穏やかで、日常的な生活の記憶はほとんど忘れていきます。



勉学や知識の領域で言ったら、学習を継続したり、使っていかなければ、

すぐに忘れてしまうし、


絵を描いたり、ものを作ったり、何かを表現していく

経験や体験を伴うの行為の記憶なんかも、

多少は残っているものはあるけど、大体は忘れるんじゃないでしょうか。



私は、この「忘れる」って、1(いち)あるものが、0「ぜろ」になるような

印象を受けていました。



一度手に入れたものを、時間と共に失ってしまうような感覚。



ですが、一旦は忘れていた事、本当に抜け落ちていた記憶が、

ある時急に浮かび上がってくる時があります。



深く沈んでいたものが、浮上してくるみたいに。



それは印象に残るような記憶ではなくて、気にも留めていなかった事柄です。


誰かに言われた一言だったり、集中して取り組んだ時間だったり、


もう何処だか思い出せない、ある風景だったり。



こどもの頃に体験、経験した記憶を一度綺麗に忘れる。

長い時間が経過し、大人になったある日、浮上してくるその瞬間に、



その人の人格を形成するほどの、忘れられない記憶として、自分に刻まれるのではないかと思っています。



こども達がこれから出会う、芸術を通した様々な経験や体験は、綺麗さっぱり忘れてしまってもいいかなと思う事があります。

(↑実際に「前に何したか忘れた!」と言われること多数。。。)



こども達が大人になった時、世の中はどんな世界になっているかはわからないです。


ひょっとしたら、苦労を経験していたり、辛い状況に陥っていることだってあるかもしれません。


そんな時、こどもの頃、表現することを楽しんでいた記憶の断片が、深く沈んでいたところから浮上してきて、



「 あの時間、なんか楽しかったな。」



と感じることがあれば、その人の忘れられない記憶として刻まれ、

困難を乗り越える力となるかもしれない。

豊かな人格形成に繋がる可能性を宿しているのではないかと思っています。