穴窯で焼いたパンはおいしい
こども達と一緒に美術やアートに取り組むことは、
アトリエや工房で絵を描いたり、彫刻や立体物を作ったり、
デジタルで表現したり、身体表現だってありの、
空間を演出することだってある。
あげればキリが無いけれど、
誰かにできたものを見せたり、発信する事が多い中
ただ表現するだけって単位で言うと、何かあるかなと、想像してみました。
そうだ、
「 穴を掘ろう! 」
。。。。。
こども達は『!?』な顔でしたが、でもちょっと面白いかも、って言ってます。
私たちは外へ飛び出し、スコップや、ショベルを手にして穴を掘り始めました。
みんなでひとつの大きな穴を掘ろう、という事だけは決めて掘り進めます。
最初の掘り始めは、土が程よい硬さでしたのでサクサク掘ることができます。
穴の形状は直径80センチくらいの円形にしたのですが、
こども達から見ると大きく見えるらしく、土遊びの域を越え始めてきました。
掘ったら掘っただけ穴は深くなるので、目に見えたやりがいを感じることができ、
こども達は協力してどんどん掘っていきます。
交代に休憩をとりながら、掘り進めていくと、少し土の種類が変わってくるのに気が付きました。
その土は少し粘りがあって、掘り出しにくく、なんだか時々粘土みたいな塊が混ざっています。
その塊、沖縄では「クチャ」と言って、
長年海に堆積した粘土状の泥なのですが、本島南部を中心とした地層に出てくることが多く、美容の業界ではスキンケアとかで重宝されているみたいです。
そのような情報は、ただ穴を掘っているこども達にとって、何の意味も持ちません。
クチャの塊が出てきては、みんなでその重い塊を掘り起こしていきます。
本格的に疲れてきた子は部屋に戻り休憩し、掘ることに夢中になっている子は掘り続けるという状態に別れ、部屋で休んでいた子は時々穴掘りの様子を見に来ます。
この時点で穴の深さは、60センチくらいでしょうか。
私も体力的に辛くなってきました。
この辺りで終わりにしようと思い、掘った穴から出てみると、
普段見慣れた風景に、いきなりぽっかり穴が空いています。
それは、こども達と掘った穴。
何だか今まで見ていた世界が、違うものに見えてくる気がします。
あの穴底の先には、違う世界の入り口になっているような。。。
庭に掘られたただの穴なのですが、ぽっかり空いた穴のある風景を
目に焼きつけ、これからも忘れないで覚えておこうという気持ちになりました。
その後、
その穴はどうしたのか。
まずは、その穴に改めて入ってみました。
そして穴の中にしゃがんで、土の中にいる感覚を味わってみます。